このドキュメンタリーの(人間側の)主人公である客室乗務員兼猫カフェ経営者であるアメリカ・ミルウォーキー在住のケイティと、カタールの首都ドーハで野良猫を救出し続けているパキスタン出身の施工管理者ウマイル。7000マイルの距離はあれど、猫への支援を日常とする2人を結びつけたのは、「カタールの25匹の野良猫に、米国で里親を見つける」というケイティのバイタリティ溢れる国際支援活動だった。世界上位の富裕国で、なぜ野良猫の国外救出支援が必要なのかー?そんな疑問を紐解くミッションをカメラに収めたのは、猫と男性の心温まる絆を描いたドキュメンタリー映画『猫と、とうさん』を手掛けたマイ・ホン監督。個性豊かで、ただそこにいるだけで愛されるべきカタールの野良猫たちの向き合う現実を直視し、状況を問わず彼らに最善を尽くし続けるケイティたちの姿に、強く心を打たれるだろう。
世界有数の富裕国であるカタール。急速な発展を維持するため、人口の89%が他国からの臨時労働者で占められていること、野良猫の数が増加し続けていることは知られていない。路上から野良猫たちを救出するのも、イラン、インド、ヨルダンなど様々な国出身の、異なるバックグラウンドを持つ人々だ。
米ミルウォーキー在住の猫カフェ経営者ケイティは、25匹の野良猫をカタールから米国へ移送し、新しい家族を見つけるため、ドーハを訪れる。4日間という限られた時間しかないケイティを待っていたのは、パキスタン出身のウマイルら同志たちとの出会い、そして野良猫たちを移送するにあたっての意義深くも難しい決断の連続だったー。

米テキサス州出身。ロサンゼルスを拠点に活動する監督、プロデューサー。生まれ育ったテキサス州ダラスの南メソジスト大学で映画学の学位を取得。『マン・フロム・リノ』(2024)や、リン・チェン監督による長編映画『I Will Make You Mine(原題)』(2020年SXSWノミネート作品)、クライミング選手の白石阿島を追ったドキュメンタリー『Ashima(原題)』(2024)などでプロデューサーを務める。10代のベトナム系アメリカ人女性の姿を描いた初監督作『Viette(原題)』は2012年に公開され、多数の映画祭に出品。ダラス・アジアン映画祭の創設者で前取締役であり、サンディエゴ・アジアン映画祭の前芸術監督でもある。初の長編ドキュメンタリー監督作となった前作『猫と、とうさん』は、2023年に最も興行収入を上げたドキュメンタリー作品の1本となり、ニューポート・ビーチ映画祭ドキュメンタリー部門功労賞、ダラス国際映画祭の観客賞など数々の賞を受賞した。









インド出身で野良猫を保護しているギリシュ夫妻によって路上から保護された。耳の先が切られていることから、誰かが不妊手術を施した上で、再び路上に戻したことが分かる。片足を失い、猫免疫不全ウイルス(FIV)陽性のため免疫力が低下しているが、適切なケアで、健康な猫と同じくらい長く生きることができる。自信に溢れ、人間に友好的。

ギリシュ夫妻の餌やりに同行した際に出会った子猫。交通事故で兄弟を失ったばかりで、自力で生き延びられないことは明らかだったため、ケイティはペット禁止のホテルにこっそり連れ帰り、翌朝、獣医のもとへ連れて行った。

動物虐待の現場から救出され、保護施設「キャット・キャッスル」で暮らしている。1年間キャリーケースの中に閉じ込められていた間に片足が重度の感染症にかかっていたが、救出後に足を安全に切断され一命を取り留めた。三本足の猫は、アメリカでは愛されるペット。

ケイティとウマイルがスーク・ワキフで偶然出会い、「レディ」と名付けられる。妊娠しているようだったがすぐに連れ帰ることはできなかったのでケイティはウマイルに保護するよう頼む。しかし、彼女の予想に反して、ウマイルはフライトの座席を交渉し、レディをアメリカ行きの保護猫リストに加えることに成功した。

ケイティがスーク・ワキフで買い物中に出会ったペルシャ猫。ペルシャ猫は非常に高価なペット種で、捨てられたことは確かだったが、自力で生き抜く術を持っていなかった。グースと出会った時点で、ケイティは既に25匹の猫を選んでいたが、土壇場でグースを搭乗させることに成功する。

ケイティが獣医師たちに最後に引き取る25番目の猫の枠を譲ると、ふわふわした大きなオレンジ色の「ドクター・ガーフィールド」がその枠を勝ち取った。数ヶ月間、動物病院に置き去りにされていた彼の過去は誰も知らないが、とても人懐っこく、新しい家族に迎え入れられるにふさわしい猫だ。


パキスタン出身の施工管理者。ドーハに移り住み16年。うつ病と診断後に医師の勧めで飼い始めた猫の「コンジー」をきっかけに、ドーハが抱える野良猫の問題に関心を持ち、保護活動に取り組む。自作の仮設シェルターで50匹ほどの野良猫を密かに保護し、ドーハの猫好き外国人コミュニティでは頼れる存在として一目置かれている。
(順不同/敬称略)
1匹の猫を助けたって世界は変わらない。でもそれが無意味だとは思わない。
鑑賞後、そんな言葉が胸に広がりました。
保護猫活動家たち、それぞれのリアルな心理が描かれた疾走感あふれる傑作―。
小池英梨子(「ねこから目線。」代表)
猫、幸せになれ……。
猫、救われろ……。
日本だけじゃない。世界中に同じことを願い、猫たちの問題と向き合う人たちがいます。
世界の保護猫活動家たちと、猫が人と人を繋いでいく姿に圧倒されました。
最終的にアメリカに運ばれた猫の数にも、注目です。
園田ゆり(漫画家)「ツレ猫 マルルとハチ」
猫に幸せになってほしい、その願いに国境は関係ない。
世界有数の裕福な国にもかかわらず、悲惨な状況に直面しているカタールの猫たち。
しかしアメリカからケイティが、25匹の猫たちを巡ってたくさんの人や猫に出会い、道を作っていく姿は力強く、気づけば手に汗を握って見ていました。
保護猫を想う気持ちは国境も関係ない、だからこそ私たちが今やっていることも世界の猫たちにつながっていると励まされました。
オキエイコ(ねこヘルプ手帳製作者)
割に合わない労力や手続き、救う命を選ばなければならない痛み、愛した猫を里親のもとへ手放す切なさ。それらすべてを引き受けてもなお、猫の命のために国境を越えて連帯する人々に、愛猫家として感服せずにはいられない。エンドロールの猫の姿に思わず涙。
ISO(ライター)
日本では認知が進みつつある「保護猫活動」だが、世界的に広がっているとは言えず、特に今回舞台になっている「カタール」での猫の扱いは深刻だ。だがそんな中でも保護活動に勤しむ人はいるし、それに7000マイルも離れているのに協力しようとする人もいる。
世界中の猫が幸せであるべきだし、そのために人間はもっと頑張るべきである、本作で頑張る人たちを見て、頑張る人が増えれば良いと思う、私も頑張る。
カレー沢薫(漫画家)「株式会社 肉球舎」
動物と暮らすということは
無性の愛を貰うということ。
そんな愛の生き物を救えるのも人間なのだ。
この映画に登場する猫達はみんな愛おしい。
そして猫達を救おうと行動する人達の姿は美しかった。
伊藤さとり(猫と暮らす映画評論家)
世界の向こう側から「この猫たちを救えるのは私だ」と立ち上がり行動する勇敢さに、強く胸を打たれた。
作品に登場する活動家や猫たちを見つめる視線は、一貫して優しく温かい。
日本でも猫の保護活動の必要性が叫ばれるなか、真に“責任のある”活動を全うできる人がどれほどいるだろうか。
映画の中だけに留まらない現実の課題と向き合わせる、見事な良作だ。
秀(漫画家)「最高カワイイ! 甘えん坊3猫日記」